マスクが怖い

 日本での久々のお正月ということで、この初七日はすべてお休みを会社からいただき、のんびりと過ごさせていただきました。当然初詣にも行きました。結果は大吉、すべてがうまくいくそうです。これにあやかって、今年も昨年以上に楽しい年にしたいものです。

 しかし東京は思った以上に寒いですね、例年こんなに寒かったでしょうか。雨も降らないので空気が乾燥し、風邪やインフルエンザが怖い環境が整ってきました。そんなわけもあってか、街を歩いていてもマスクをしている方をよく見かけます。しかしこのマスク、日本ではとても容易に手に入りますが、イギリスでは全然売られていなくて入手するのが大変でした。薬局に行っても通常は取り扱っておらず、仕方が無いので日系の病院でもらった一枚のマスクを洗って何度も大事に利用したり、amazonで医療用のサージカルマスク、というものをわざわざ調達したりして過ごしていました。もちろん道でもマスクをして歩いている人は全然いませんでした。そう考えると、他の国はよくわかりませんが、もしかしたら日本は世界に冠たるマスク大国と言えるのかもしれませんね。

        • -

 ただ、実は日本に帰ってからの違和感の一つに、マスクをして歩いている人の事が何となく怖く感じられる、というものが自分の中であるのです。どうしてかなあと考えて見たのですが、多分答えとしては、顔が隠れていて表情が読み取りにくく、その人が何を考えているかが分からない、あるいは素性に何か隠しているものがあるのではと不安になってしまう、ということがありそうな気がしてきました。

 イギリスに今も滞在している知人(日本人)がこんな事を話していたのですが、風邪を引いてマスクをしたまま大学に講義に出ようとしたら、警備員に呼び止められて身分や用件などを根掘り葉掘り聞かれたと。そこで普段は大丈夫なのになぜ今回は厳しいのかと問うたところ、「マスクをしているので怪しいと思った」と言われたらしいのです。そんなわけで、イギリスでマスクをしているとちょっと怪しい人に思われることがあります。確かに、特にロンドンでは他国籍社会ですから、いろんな文化の人が入り交じって生活している。その中でマスクで顔を覆った人がいたら、顔の表情という意思疎通にとって極めて重要なパーツが使えなくなっているわけで、確かにちょっと怖さが増すように感じます。以前の記事でも触れましたが、イギリスではちょっとした商店の店員さんとの間でもアイコンタクトや表情でのやりとりが割と多いですし、そういう非言語のコミュニケーションで人間関係、あるいはコミュニティの安心感を持たせているところがあるように思います。なので、それに慣れてしまって帰ってきた私は、街を歩いていて多くの方がマスクをしているのを見ると、何とも言えない不安に駆られてしまう訳なのです。

 それは言い換えると、ある意味では日本がイギリスよりも犯罪などが少ない安全な社会である事と関係がありそうですし、またある意味では、日本に住んでいる人々が比較的画一的文化(人種?)の下に暮らしているため、表情が分からなくても意思疎通やコミュニケーションに不自由しにくいという事も影響していると思います。また、コミュニケーション自体の頻度というか必要性そのものが低い(マニュアル化された対応、駅や道で他人とぶつかってもあまり謝らない、など…)という点も関係があるかもしれませんね。

 多分外国の人が花粉症の時期の日本に初めて来たら、すごく怖い思いをするんだろうなあ…