大学の試験、イギリスの最近

現在英国の大学は5月〜6月上旬の試験シーズンを迎え、学生が格闘しているところ。自分もその例外に漏れずそれなりの努力をしているが、いかんせん英語ネイティブとの差、特に答案を書くスピードが全く及ばないことに結構落ち込んでいる。よく「エッセイは分量ではなく中身が重要」と言われるが、そもそも最低限の内容が無いと中身で戦う段階に立てないわけで、今年をなんとか切り抜けることができたら、来年に向けて英語力からまた鍛え直さないといけないなあ。

こちらの試験の多くはエッセイ形式で、3時間で3〜4問について「導入−本体−結論」を備えたエッセイ風の回答を書くというもの。その時間内の振る舞い方は結構自由で、水やペットボトルの持ち込みは自由だし、人によってはお菓子(食べてもうるさくないもの)を持ち込んで長期戦に備えている。また、エッセイを書く際には大抵ペン(ボールペンなど)を用いて、修正したい際は塗りつぶしたり×印を付けたりして、その続きからまた書き始める。鉛筆やシャープペンシルはあまり一般的ではないらしく、むしろ使用が許可されているか事前に確認した方が良いとアドバイスを受けたぐらい。

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最近のイギリスでのニュースと言えば、もちろんロイヤルウエディングもそうだが、大きなものは選挙制度に関する国民投票かもしれない。内容は現在の単純小選挙区制度を改正し、推薦順位を書き込んで投票する「優先順位付き連記投票制(alternative voting(AV))」を導入するかどうかと言う点で、導入を検討する理由としては死票を少なくすることとあるが、近年2大政党制が揺らいできて、いま内閣が保守党と第3勢力である自由民主党の連立になっている事が大きく影響しているのだと思う。もしAVであったら、2010年総選挙で自由民主党は相当数議席を上乗せすることができていたらしい。そういう点で、内閣提出の案でありながら保守党出身のキャメロン首相はAVに反対の立場である点もまた興味深い。

<AV方式の説明(英語)>
How the alternative vote works – interactive guide | Politics | theguardian.com


が、結果は皆さんがご存じのとおり、国民投票でAVは大差で否決され、もとの小選挙区制のままということになった。
<(参考1)英国Guardian紙>
No to AV ... Yes to a whole new constitutional conflict | Politics | The Guardian

<(参考2)毎日新聞>
http://mainichi.jp/select/world/news/20110507dde007030002000c.html

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この結果により、イギリスでは連立政権の今後、特に小政党である自由民主党がどのような方針で党勢の挽回を図るのかが注目されている(大きな政策の一つである保険制度(NHS)改革で、連立内の方針対立が鮮明になってきているとの報道もあるし)。

ただ、選挙制度に関連して個人的に思ったのは、イギリスではどのぐらい死票があるのか、また国民一人当たりどのぐらい国会議員がいるのか、ということであった。で、調べてみると、死票の数は正直よくわからなかったのだが、国会議員(イギリス:下院、日本:衆議院)一人当たりの国民数を計算してみると、以下のようになった。

  • イギリス:(総人口=約6200万人(2009))/(下院定数=650人)=約95,000人/1議員
  • 日本:(総人口=約12800万人(2005))/(衆議院定数=480人)=約267,000人/1議員

というわけで、この側面から見ると、日本ではいま国会議員数の削減(特に参議院?)が検討課題となっているように認識しているが、実は逆に国民の声を反映させるだけの人数が十分に揃っていない可能性もありうるのでは?と思った次第。もちろん数が増えればそれだけ意見をまとめて国会運営を進めていく事が難しくなるのかもしれないし、ただでさえ国会議員の歳費、また人材の質についての問題が指摘される中で、定数を増やすという議論がすぐに出てくるとも思っていないが、一つのおもしろい検討材料なのではと思う。
例えばいま大変な議論になっている原発についても、より狭い地域単位で代表を選ぶことができていれば、原発立地地域の代表として国会議員になるような人物が出てきやすくなって、国会で踏み込んだ議論ができたかも、など考えてみたり。