大英博物館で日パ文化交流

今日は久々に写真中心でお送りします。

最近寮のパキスタン出身の友人とよくチェスや囲碁をやっているのは、二週間ほど前にもちらっとこのブログでも書きましたが、ゲームをしながらお互いの国の歴史などの話で盛り上がることがしばしばあったのです。
それでせっかくロンドンには大英博物館があるから、一緒に博物館に行ってお互いの国の展示品を説明し合おうということになり、今日行ってきました。


(大英博物館の入り口です)

しかし、南アジア(インド・パキスタン関係)と日本のものを見て回るだけでも本当に疲れました…12時から見始めて4時過ぎまでかかったように思います。
大英博物館はとにかく広くて貯蔵品が多いので、これまでにもちょくちょく散歩がてら行くこともあったのですが、まだ全然一部しか見ていないような印象です。
日本に帰るまでにすべて見て回ることができるのか、不穏なペースです。

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最初は彼の専門である、南アジア方面に。
南アジア関係の展示は、なぜかインダス文明関係のものはなく、古代・中世の南アジアの展示のところで2世紀頃からのヒンドゥー教・仏教関係のものと、後はイスラム美術のところでムガル帝国の美術品が少し展示されている程度でした。
インドを治めていた英国としては、展示がちょっと少ないような気もしますが…インド統治中に山ほどの宝物を盗んできたという批判もあるので、展示として表に出す品物は少なくしているのかもしれないですね。

ヒンドゥー教・仏教関係のところには、3フロア分のスペースに、シヴァ神とかヴィシュヌ神といったヒンドゥーの神々の像や、インドでまだ仏教が盛んだった頃の仏像に加え、その他の宗教であるジャイナ教やシク教などのものも展示されていました。
パキスタン出身である友人はイスラム教徒なので、そこまでヒンドゥーなどに詳しくはないようでしたが、それでもさすがに僕よりはよく知っているので、色々と教えてもらいました。


(主神の一人であるシヴァ神とその妻であるパールヴァティー神)


(20世紀初頭に作られたネパールの王冠)


(像の頭を持ったガネーシャ神。「障害を払いのける神(Removing the obstacles)」とのこと)

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さらに進み、今後はイスラム美術のフロアに。
ここにはイスラムが発祥したアラビア半島を始め、北アフリカ、イベリア、イラン、アフガニスタン、モンゴル、ムガル(「ムガル」は「モンゴル」がなまったもので、ムガル帝国の王族の先祖はチンギスハンであるとか)などの美術が集められていました。
しかし残念なことに、パキスタン地方を治めていたムガル帝国のものはとても少なく、ちょっと彼に申し訳ないような気になりましたが…

それでも、実は彼がアラビア文字を読めるということも明らかになり、ムガル帝国の遺物に限らずイスラム美術全般、及びその背景にあるイスラム教の思想(偶像崇拝が禁止されていた理由や占い・魔法の扱い、イスラム教の寛容さなど)について教えてもらえて、とても刺激的でした。
やっぱり、わかっている人と一緒に博物館に行くとひと味違いますね。


(ムガル帝国で使われていたタバコ用の何か(水タバコの一種?))


(ムガル帝国で作られた翡翠製の亀)


(イスラム教国で使われた武器の数々)

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次に、満を持して日本のエリアに。
日本のエリアは、大英博物館最上階の5階に3フロア分が専用に設けられていて(三菱商事が提供しているようです)、日本の雰囲気に合った内装にしているなどなかなか凝った造りでした。
中には写真にあるほかにもたくさんの展示物があり、妻と僕は拙い英語で必死に説明をしたのですが、果たしてうまく伝わったかどうか…


(入り口です)


(佇まいはこんな感じで、結構いい雰囲気です)


(法隆寺にある百済観音像のレプリカや茶室の再現など、さすがに凝っています)


(埴輪の説明のところになぜか「土偶ファミリー」というマンガが置いてありました…)


(いろいろ)


(戦前の対外政策に関する記述はやはり気になってしまいます)


(最後の〆はナウシカでした)


彼は囲碁をやってみたいと思うほどの人ですし、日本文化に結構強い興味を持っているようで、中でも仏教(特に禅の思想)や武士(特に武家政権の性格や身分制度など)、戦後の日韓関係(印パ関係との比較という面があるのでしょうか)などに説明時間の多くを割くことになりました。

ちなみに彼が展示品を見ながら日本文化について発したキーワードを挙げておくと、
 ・ラストサムライ
 ・キル・ビル
 ・ブシドー
 ・ゼン
 ・マンガ
 ・ヘンタイ
 ・エンペラー
といったところです。

彼が漫画(土偶ファミリー)を見たときに突然「ヘンタイ」と口走ったときには、日本文化の懐の深さについて悩まざるを得ませんでしたね。